東京地方裁判所 昭和50年(借チ)3012号 決定 1976年2月23日
甲事件申立人、乙事件相手方(以下申立人という。)
有限会社霞ケ関商事
右代表者
官崎英男
甲事件相手方、乙事件申立人(以下相手方という。)
加賀武文
主文
一 申立人から相手方に対し、別紙目録(一)記載の土地に対する建物所有目的の賃借権および同目録(二)記載の建物を代金七六三万円で売渡すことを命ずる。
二 申立人は相手方から右代金七六三万円の支払を受けるのと引換に、前項の建物につき所有権移転登記手続をなし、かつ同建物のうち(1)の建物を明渡せ。
三 相手方は申立人に対し、申立人から前項の所有権移転登記手続および建物明渡を受けるのと引換に、第一項の代金七六三万円を支払え。
理由
(甲事件申立の要旨)
一、申立外坂下健次は、昭和三四年二月二六日相手方から別紙目録(一)記載の土地(以下本件土地という。)を期間昭和五四年二月二六日まで、建物所有の目的で賃借し、同地上に同目録(二)記載の建物(以下本件建物という。)を所有していたが、右建物につき昭和四九年二月二〇日任意競売手続が開始されたところ、申立人は、昭和四九年一〇月三日これを競落し、昭和五〇年三月五日右競落代金六一九万一〇〇〇円を支払い、同年同月二四日所有権移転登記手続を経由した。
二、申立人は、本件建物の競落にともない、その敷地である本件土地の前記賃借権を承諾したが、右賃借権の譲受について相手方の承諾を得られない。
三、よつて、相手方の承諾に代わる許可の裁判を求める。
(乙事件申立の要旨)
相手方は、本件建物および本件土地賃借権を自ら譲受けたいので、その旨の裁判を求める。
(当裁判所の判断)
一本件資料によれば、申立人および相手方の各申立は、いずれも違法であると認められるので、相当の対価を定めて申立人から相手方へ本件建物および本件土地賃借権の譲渡を命ずることとする。
二鑑定委員会は、相手方が譲受ける場合の本件土地の借地権価格を本件土地の違付価格の約六五パーセントにあたる六五七万二〇〇〇円、本件建物価格を一八一万五四〇〇円とそれぞれ評価したうえ、本件建物のうち(2)の建物に借家人がいることを考慮し、右合計額八三八万七四〇〇円より借家権価格として右合計額の一〇パーセント相当額を減じた七五四万八六〇〇円をもつて相手方が本件土地賃借権および本件建物を譲受ける場合の対価とするのが相当である旨の意見書を提出した。
三当裁判所も基本的には右鑑定委員会の算定方法を相当と考えるが、鑑定委員会が前記借家権価格算定の前提として現行借家契約の賃料を月額四万四〇〇〇円としている点は誤りであつて、実際は月額五万円であることに鑑み、本件借家権価格(借家人が存在することによる負担として相手方の譲受対価より減額すべき額)は、前記本件建物価格および本件借地権価格の合計の九パーセントとするのが相当であると考える。したがつて、本件譲受対価は、前記八三八万七四〇〇円よりその約九パーセント相当を減じた七六三万円と定める。
右譲受対価の支払と本件建物の所有権移転登記手続および本件建物のうち(1)の建物の明渡とは、同時に履行させるのが相当である。なお、本件建物のうち(2)の建物については、借家人がいるが、相手方が右建物について所有権移転登記手続を経れば、当然に右借家人に対し、賃貸人たる地位を主張することができるから、これについて明渡、又は指図による引渡を命ずることはしない。
よつて、主文のとおり決定する。
(前島勝三)
<目録省略>